研究概要 |
1) 本来動物の生体内に存在しないPEG(ポリエチレングリコール)をラット腸管内に留置したカテーテルより投与し各種ストレスを与え、正常環境下で腸管粘膜を透過しないPEGの血中濃度を測定し、ストレス程度と腸管透過性を検討しヒトのバクテリアルトランスロケーション(BT)診断に応用する事を目的とした。 研究成果: エンドトキシン5mg/dlをラットに静脈投与しショックモデルを作製しラット腸管内に投与した分子量4000のPEGと20000の血中陽性率を検討した。PEG4000で血中陽性率は100%、PEG20000で0%となりBTの診断にはPEG4000が適切であった。エンドトキシン刺激を0.1mg/kg、、1mg/kg、5mg/kgと変化させBTの発生頻度(PEGが腸管内より血中へ以降すること)を検討するとエンドトキンン投与濃度が上昇すると血中PEGの陽性率も上昇し5mg/kgエンドトキシン投与群で100%となった。出血性ショックモデルにおいてもBTは発生し酸素投与がこれを改善せしめる事を証明したCorrelation between Ins. 2) 2症例の臨床例(抗癌剤投与および放射線治療後悪性リンパ腫患者、イレウス患者)の手術患者において腸管から血中に細菌が移行したことを証明した。第一症例は後腹膜に出血があり大腸切除しこの部のリンパ節に緑膿菌が光顕的に証明され、また血中培養、腹水培養においても同菌が証明された。第二症例は慢性イレウス患者においてS状結腸切除施行しリンパ節および血中培養にて肺炎桿菌が証明された。以上の2症例より臨床例においてBTの存在を報告した(Bacterial Translocation as a Cause of Septic Shock in Humans:A Report of Two Cases,Surg Today,Jpn J Surg(1997)27:447-449)。
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