【基礎的検討】抗MUC1抗体による免疫組織染色にてMUC1抗原の発現を、膵癌60例にて観察した。その結果、MUC1の陽性は54例、陰性6例であった。これらの予後を比較すると、陰性例の予後は良好であった。また、膵癌の90%がMUC1を発現していることが明らかとなった。現在、ヌードマウスを使用し、ヒト膵癌培養株を移植、腫瘍が2cm大となった後、CTLを移入し、その腫瘍集積性を確認する計画を立てている。【臨床的検討】現在、MUC1特異的CTLを誘導し、膵癌切除例7例に対して、術後にMUC1-CTL療法を行った。十分なinformed consentを得ている。内訳は、男性4、女性3例、治癒切除5例、絶対非治癒切除2例(肝転移)である。術式は膵頭十二指腸切除2例、膵尾側切除5例であった。患者末梢血を当院にすでに設備されているフェレ-シシステムを使用し、リンパ球を分離、同リンパ球とヒト膵癌細胞(YPK-1)を混合培養し、IL-2刺激によりMUC1特異的CTLを誘導、患者に移入した。移入時には、細菌検査およびflow cytometryによるリンパ球の分画を測定した。全ての症例でCTLが誘導され、細菌の混入は認めなかった。2症例でCa19-9が上昇しているものの、現在全例生存中であり、治癒切除の5例では肝転移再発を認めていない。治癒切除例の50%が1年以内に肝再発を生じることからも、本療法の有効性が確認されつつある。
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