1) 術後再建胃管内の胆汁逆流、胃切除後胃食道逆流の病態 教室で開発しているBile sensorを用いた検討を行った。Bile sensorは胆汁色素をセンサーに感知することにより、今まで測定できなかった膵液、胆汁の逆流を把握するものである。 (1) 基礎的データーの集積:胆汁色素を希釈系と吸光度値の相関を確認した。健常人の測定により、吸光度0.2以上を胆汁逆流有りとした。 (2) 食道内胆汁色素の測定:逆流症状を持つ患者ではないものよりも吸光度0.2以上の頻度が増していた。胃切除後患者においても逆流症状のあるものに吸光度0.2以上の頻度が高く、ないものでは健常対照群と差がなかった。 (3) 胃管内胆汁逆流:食道切除後再建胃管内にも高頻度に胆汁の逆流を認めた。 2) 再建胃管の血流に関する検討:再建胃管の血流に対する胸部交感神経切除の影響を検討する目的で右交感神経節を切除した開胸開腹食道切除と交感神経節切除をしていない食道抜去群とに対して術中にトノメーターを挿入、術後3日間のpHiを測定した。術後pHiは開胸食道切除群で有意に高く推移し、交感神経節切除により胃管血流量が増加することが示された。 3) 噴門側胃切除後U字型空腸pouch間置術の評価:噴門部早期胃癌に対し噴門側胃切除U字空腸を間置し、pHモニター、Bile sensorを用いて胃食道逆流を検討、ダンピング症の発生に関して胃では吸収されず、空腸で吸収されるアセトアミノフェン吸収を確認、超音波ドップラー法を用いて門脈内血流量を測定、また、排泄能をマーカー法で検討した。胃、十二指腸食道逆流はほとんど認めず、健常群と差を認めなかった。血中アセトアミノフェンは噴切群で全摘群同様、早期に高値をとったが、慢性期では健常に近いパターンとなっていた。門脈血流量は胃全摘群に比較して正常パターンにより近いカーブを描いており、ダンピング症状も認めていない。
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