肝切除後肝不全high riskグループに対する術翌日24時間の低分子領域蛋白除去療法により、ビリルビン、エンドトキシン、ヒアルロン酸、およびLCATは著名な改善を示した。また、二日目以降も改善傾向が維持されたことは、この治療法が一過性の血液浄化機転以外に、肝不全の原因物質や憎悪物質の除去、肝と他臓器との種々のmediatorを介した相互臓器障害の防止などにより生体防御機構が増強されるものと思われると平成8年度の報告書で報告した。今回、その原因物質として、肝切除における肝臓でのサイトカイン産生能の検討を行った。 【対象】平成9年に肝切除を施行した症例の内、肝静脈内カニュレーションを施行した17例を対象とした。男性11例、女性6例。平均年齢64.5±1.9歳。 【方法】肝切除前に、肝静脈内にスワンガンツカテーテルを留置。麻酔導入後、肝切除前、肝切除後、術直後、術後第1、2、3病日の肝静脈内IL-1ra、IL-6、IL-8濃度を測定し、末梢血のそれと比較検討した。 【結果】IL-6の上昇は、比較的低値で推移したが、各測定時点において、肝静脈と比べ末梢血で高値を示しながら推移し、術直後で有為差を認めた(p<0.05)。肝静脈内IL-1ra、IL-8もIL-6と同様の推移を示したが、末梢血濃度との間に有意差を認めなかった。 【まとめ】肝切除症例における肝静脈内IL-6濃度の変動は、末梢血と比較して低値で、手術侵襲が大きいにも関わらずその変動は、比較的軽度であった。すなわち、肝切除術翌日24時間の低分子領域蛋白除去療法の有効性は、IL-6を代表として肝臓にて産生されるサイトカインの除去によるものではないことが推測された。
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