研究概要 |
肝の切除術後肝不全は、肝切除に伴う肝予備能の低下を契機とし、手術侵襲による残存肝自体の障害、ならびにそれを原因とした他臓器障害を併発し、かかる臓器での障害が肝に対する負荷となり、さらに肝機能を悪化させるという悪循環に陥る病態である。そこで肝切除術後早期に、肝不全の原因物質や憎悪没し津の除去、ならびに種々のmediatorを介した多臓器障害の発現防止の必要があるものと考え、肝切除術肝不全high riskグループに対して、原則として術翌日24時間に亘りEVAL-2A膜を使用した低分子領域蛋白除去療法を行いった。その結果、肝切除後肝不全high riskグループに値する術翌日24時間の低分子領域蛋白除去療法により、ビリルビン、エンドトキシン、ならびに肝類洞内皮差障害の指標となるヒアルロン酸、および肝臓における蛋白合成能の指標であるLCATは著明な改善を示した。また、二日目以降もこの改善傾向は維持されたことは、低分子領域蛋白除去療法が一過性の血液浄化機転以外に、肝不全の原因物質や憎悪物質の除去、肝と他臓器との種々のmediatorを介した相互臓器障害の防止などにより生体防御機構が増強された結果であることが判明した。しかし、現在知られているmediatorの代表であるIL-1ra,IL-6,IL-8などのサイトカインを検討したところ、肝切除後の肝静脈内濃度は、末梢値と比較して低値で、手術侵襲が大きいにも関わらずその変動は、比較的軽度であった。すなわち、肝切除に伴って肝臓から産生されるサイトカイン濃度は低く、肝切除術翌日24時間の低分子領域蛋白除去療法の有効性は、IL-6を打愛表とし肝臓にて産生されるサイトカインの除去によるものではないことが推測され、今後の検討が必要と思われた。
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