研究課題/領域番号 |
08671453
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 展章 愛媛大学, 医学部, 教授 (60135564)
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研究分担者 |
嶌原 康行 愛媛大学, 医学部, 助教授 (30196498)
山本 成尚 愛媛大学, 医学部, 助手 (30253298)
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キーワード | 還元型グルタチオン / 酸化型グルタチオン / GHS / GSSG / 肝虚血 / 再潅流 / エネルギーチャージ / 肝組織 / 腎組織 |
研究概要 |
[目的]肝臓外科に応用される70%肝実質の流入血行遮断・再潅流後の肝不全防止の立場から、肝のViability、oxidant stressに対するprotectionの病態とstressの限界について明らかにする観点から、肝の虚血・再潅流時におけるグルタチオンの経時的変化を肝組織、腎組織及び血液について検討した。 [方法]体重250-300gのSD系雄性ラットを用いて肝70%相当領域の流入血行を60分間遮断した後、再潅流した。遮断前、遮断後60分、再潅流後5分、30分、1時間、3時間に肝組織(虚血葉と非虚血葉)と腎組織および血液(動脈血)を摂取した。血漿中と肝組織中、腎組織中のグルタチオン(GSH:還元型、GSSG:酸化型)、肝組織中アデニンヌクレオチド量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、また血漿中の過酸化脂質とGOTを測定した。 [結果]70%肝虚血、再潅流によって、血漿中過酸化脂質の上昇は見られなかったが、GOTは225KU/lから経時的に上昇し、再潅流3時間後1646に達した。虚血葉肝組織のエネルギーチャージ(EC)及びATP量は虚血60分で最低下したが、再潅流後5分でともに回復した。非虚血葉のEC、ATPは変化なく経過した。肝虚血葉では、組織中のGSHは経時的に低下傾向を示し、再潅流3時間で回復した。GSSGはとくに再潅流1時間で上昇を示した。その結果、肝組織の酸化還元電位を反映するGSH/GSSG比は、血行遮断後60分、再潅流後、低下傾向を示し、1時間で最低となり、3時間では上昇した。一方、肝非虚血葉では組織中グルタチオンは全体には明らかな変化を認めなかったが、再潅流後3時間で、GSSGの減少がみられた。腎組織中のGSHは前値で、肝組織より低い値であったが、再潅流後3時間で上昇を示し、GSSGは遮断60分と再潅流3時間で低値を示した。血漿中の値は、GSH、GSSGは継続的に上昇し、ともに再潅流1時間に最も高い値を示したが、GSH/GSSG比は有意な変動を示さなかった。 [考察]70%肝実質の流入血行遮断・再潅流を行った際、肝のViabilityを示すECは再潅流直前に最低となり、再潅流5分で回復する。この際のグルタチオンの変動は、虚血葉ではGSHが消費され、再潅流1時間で低下し、3時間で回復するが、GSH/GSSG比もほぼ連動した。非虚血葉では基本的にグルタチオン代謝(とくにGSH)への影響はほとんどみられなかった。腎では、肝の虚血再潅流の影響が認められた。 [結語]70%肝60分虚血・再潅流時に肝非虚血葉では、グルタチオン代謝からみた場合、虚血葉の影響は殆どないものと思われる。
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