我々は、これまでヒト培養膵癌細胞株に30GyのX線を照射すると、蛋白合成を必要とする能動的細胞死であるアポトーシスがおこることを見いだしている。また、エトポシドは、アポトーシスをもたらす代表的は薬剤であり、ヒト膵癌細胞株に対しても、アポトーシスによる細胞死をもたらす。そこで、この2つのアポトーシスをおこす刺激を同時に膵癌細胞に加えて、細胞死促進効果を検討した。細胞死はトリパンブルー色素排除試験によった。しかしながら、大線量X線照射による細胞死は、同時投与ではエトポシドの濃度によらず増加しなかった。この結果から、まったく異なる刺激であっても結果的に同一の細胞死であるアポトーシスをおこす場合、一定の細胞周期にある細胞群のみが高い感受性を示すのではないかと思われた。そこで、細胞周期を変動させることを目的として、0.5μMの低濃度エトポシドを24時間前に投与した後に30GyのX線照射をおこなって細胞死を観察した。すると、有意な細胞死の増加がみられた。フローサイトメトリーによって細胞周期の変化について検討をしてみると、0.5μMのエトポシドを投与すると、24時間後には大部分の細胞は、S期へ集積していた。また、大線量X線照射では、ほとんど全ての細胞群がG_2M期への集積しており、高濃度のエトポシドでもG_2M期への集積がみられた。現在、エトポシドによる細胞死促進効果の機序をさらに検討するとともに、他の薬剤による効果も検索している。
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