研究概要 |
膵癌細胞のシアリルLe^a産生に関与する糖転移酵素の検討 シアリルLe^aおよびシアリルLe^xの発現を調節する因子として、これらの糖鎖構造を合成する糖転移酵素の活性が重要と考えられる。α1,3/l,4フコシルトランスフェラーゼ(Fuc一T)は、この最終段階に作用する酵素で、これまで5種類がクローニングされている。このうち、シアリルLe^aを合成しうるFuc-TとしてはFuc-TIIIが知られている。そこで膵癌細胞のシアリルLe^a発現に関与する糖転移酵素を同定するために、RT-PCR法にて培養細胞株におけるFuc-T遺伝子の発現を検討したところ、シアリルLe^aの発現とFuc-TIIIには相関が認められた。また、シアリルLe^a陰性、シアリルLe^x陽性のPANC-1細胞に、Fuc-TIII遺伝子を導入すると、シアリルLe^aが強発現し、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞への接着性も亢進した。 膵癌細胞ではシアリルLe^aが癌細胞と血管内皮細胞の接着に関与し、血行性転移に重要な役割を担っていると考えられた。大腸癌では、癌細胞のシアリルLe^aの発現と患者の予後との相関を指摘する報告も多いが、その背景には、こうしたシアリルLe^aの癌転移への関与があると思われた。
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