研究概要 |
肝転移の治療と防止を目指し、臨床応用を目的としてLiposome化抗癌剤の動注,門注の治療効果を家兎を用いて基礎的に検討した。Liposomeをdrug carrierとして、liposome-epirubicin (Lipo-EPR)を製作・調整し、肝動脈内,門脈内,末梢静脈内に各々3mg/kgのLipo-EPR,free-EPRを投与しEPRの体内動態について検討した。EPRの血中濃度はLipo-EPR,free-EPR投与後、3分,5分,30分,60分,180分後に採血し、HPLC法にて測定し各々比較検討した。 その結果、血行動態においてLipo-EPR群がFree-EPR群に比べて1分から15分値まで高値を示し、liposome化抗癌剤とすることにより肝臓にtargetingされたLipo-EPRが徐々に血中に放出されたものと思われた。しかし肝動脈内,門脈内投与の両ルート間においては現在までの検討では殆ど差は認められなかった。また180分後の採血後直ちに犠牲死させ、肝臓、脾臓、腎臓、肺臓、心臓、骨髄の各臓器へのEPRの組織内濃度をHPLC法にて比較検討した。その結果、Lipo-EPR群がfree-EPR群に比べ、肝臓、脾臓などで高値を呈し、肺臓、心臓などでは反対に低く、Lipo-EPRが網内系臓器にentrappedされたためであると思われた。しかし肝動脈内,門脈内投与の両ルート間においては現在までの検討では大きな差は認められず、実際の治療効果にどのように影響するかを含め、家兎の治療モデルを用いて両者の生存期間などを含め検討中である。このLipo-EPRの種々の投与経路の安全性を確認するため、投与後の肝機能検査、エンドトキシンの有無などについて検討してきたが、いずれの投与ルートでも正常範囲内であった。現在までの三者の投与経路での肝転移の治療と防止に対する検討では、末梢静脈に比べ、肝動脈、門脈経路による局所療法が血行動態の結果からでは、肝臓などに対してより効果が期待できるような結果であるが、実際に家兎を用い転移性肝癌モデルを作成し検討し各々の治療効果について比較検討を行い経過観察をしている。
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