1. 消化器癌に対する抗癌剤の感受性とapoptosis関連遺伝子産物の発現 5-FU+低容量cisplatin(FP)療法を行った胃癌30例の内視鏡生検標本を用いた免疫組織学的検討はでは、18例がp53陽性(mutant type)であり、このうち3例がFP奏効例であった。陰性(wild type)では12例中10例が奏効例であった。p53蛋白が正常のものは有意に(P=0.04)FP療法の奏効率が高かった。またBax蛋白陽性例ではBcl-2蛋白陰性のものが有意にFPの奏効率が高く(P=0.036)、また有意に予後が良好(P=0.008)であった。 2. ヒトスキルス胃癌細胞株のICE活性と抗癌剤感受性 interleukin-1β converting enzyme(ICE)はp53やその他の経路により伝達されるapoptosis誘導の伝達路の最終にあり、endonuclease活性を亢進させるとされている。 OCUM-2M、OCUM-2M/DDP、KATO-III、MKN-28の4種の胃癌細胞株についてcisplatinを暴露したところ、いずれの細胞においても約3時間後にICE活性がpeak値をとり、またそれぞれの感受性試験における50%阻止濃度(IC_<50>)とICE活性化(曝露前ICE活性を対照)はr=0.66で相関を認めた。すなわちICEはearly response proteinとしてcisplatin感受性の指標になる可能性が示唆された。また、OCUM-2MとOCUM-2M/DDPの2株で、ICE活性比とapoptotic index (AI)を測定したが、耐性株(/DDP)の方がICE活性比、AIともに有意に低かったことから、両者の関連が示唆された。 3. 抗癌剤感受性におよぼすp53遺伝子変異部位の同定 SSCP法によるp53の解析では、FP療法を行った胃癌、食道癌、膵癌8例でPR6例中4例がwild typeであり、NC2例はいずれもmutant typeであった。遺伝子からみてもp53の変異と化学療法の奏効度に相関があると考えられた。DNA sequencingによるp53遺伝子の解析ではparital response症例でexon7、codon259のpoint mutationを認めたが、同じexon7でもcodon241-245の13bpのdelitionを示す例では奏効度no changeであり、exon単位の解析(SSCP)だけでは不十分なことが示唆された。FP症例以外に胃癌11例、大腸癌6例、膵癌1例、肝癌3例、胆管癌1例の切除標本を用いてp53遺伝子解析を行い、外来で経口によるフッ化ピリミジン系の抗癌剤投与をおこなっているが、その効果とp53変異部位の解析には長期の予後観察が必要で、現在観察を継続中である。
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