アガロースマイクロカプセル化異種膵ラ島移植時のNOによるラ島傷害防禦を目的として、移植時におけるNO阻害剤であるニコチナマイド、NMMA投与は、十分な効果をもたらさなかった。 そこで新たに異種移植免疫よりのラ島防禦を目的として免疫隔離膜を開発し、(1)ハムスターラット間のconcordant異種移植、(2)膵全摘糖尿病犬をレシピエントとし、免疫抑制剤非存在下にてブタラ島移植実験を行った。膜特性・成分は、細胞性免疫隔離として5%アガロースを、C3消耗による補体第二径路不活化に5%ポリスタイレンスルホン酸を、その外層に1%ポリブレン・カルボキシメチルセルロースを用いた。 【方法】(1)3000個のハムスターラ島を、糖尿病ラットの腹腔内に移植した。マイクロカプセル化の有無により、2群に分けた。(2)成ブタ膵体尾部より単離したラ島をマイクロカプセル化し、5匹の膵全摘糖尿病レシピエントに腹腔内移植した。対象群として裸のブタラ島を2匹のレシピエントに移植した。術後の血糖管理は、空腹時血糖値が、200mg/dlとなるようにインスリンを投与した。【結果】(1)対象群に比し(1日)、マイクロカプセル化ラ島移植群では有意に生着期間(125日)が延長した。(2)対象群では2匹とも移植後のインスリンオフの期間、ブタCPR陽性化は認めなかった。マイクロカプセル化ラ島移植群では、5匹中2匹にインスリンオフの期間を14週・7週間認め正常血糖を維持し、全例にブタCPRが陽性となった。【結語】アガロース/ポリスタイレンスルホン酸マイクロカプセルは異種ラ島移植において免疫隔離能を有することが確認できた。 一方、摘出可能なマイクロカプセル化ラ島移植部位として大網嚢内移植は、腹腔内に比べ有用であった。今後の課題として、質の高い・高収量のブタラ島の安定した単離方法の確立、高封入率・薄く一定した膜厚を有する高性能のマイクロカプセル化作製装置の開発、移植部位の工夫などが、臨床マイクロカプセル化異種ラ島移植の実現に必要であると考えられた。
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