研究概要 |
結晶性の無機リン酸塩を含む黒色胆石34例について化学分桁とともにX線回折と赤外線分光分析を行い,その結晶質・非結晶質成分について検討し,次の結果を得た. 1)結晶性リン酸カルシウム塩にはHydroxyapatite(HAP)とWhitlockite(TCP)の2種類があり,HAPを含むもの20例,TCPを含むもの8例,両者を含むものが6例であった. 2)34例のうち,リン酸塩のみを含む23例についてCa含量(Y軸)とP含量(X軸)の相関を求めると,HAP群ではY=2,154X+18.00(r=0.9943),TCP群ではY=1.964X+13.43(r=0.9994)の回帰式が得られ,極めて高い相関が得られた.また,それぞれの回帰直線の傾きはHAP群2.154,TCP群1.964であり,HAPとTCPの理想式から計算されるCa/Pのそれぞれの理論的重量比2.157と1.941に極めて近い値を示した. 3)CaとP含有量の相関は極めて高く,ほとんどがHAPとTCPによって決定されることから,黒色石の中で大きな割合を占めるpolybilirubinateなどの非晶質黒色物質に由来するCa量はあまり多くないものと考えられた. 4)X線回折法による炭酸カルシウムの結晶形をみると,リン酸カルシウム塩+炭酸カルシウム塩を含む群(PC)においてはカルサイトの出現頻度が最も高く,次いでバテライトであった.これは炭酸カルシウムを含む群(C)においてはアラゴナイトが高頻度であるのと対比的であった. 5)その他,成分的に特定できなかったがX線回折上6°〜9°の低角度の部分にピークを示す例がみられた.しかもこれらはビリルビンカルシウム石群でしばしばみられる回折パターンとほぼ一致していた。
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