幽門輸保存膵頭十二指腸切除術(PPPD)後に生じる胃内容停滞の原因を解明するために、雑種成犬を用いて以下の実験を行った。 コントロール群は8頭、PPPD群は12頭で、PPPD急性犬(術後7日目まで測定)は9頭、PPPD慢性犬(術後7日、14日、28日目に測定)は3頭であった。 コントロール群の空腹時の胃体部、前庭部では平均108分の周期で、平均持続時間15分42秒のintermittent migrating complex(以下IMC)が規則正しく出現し、摂取したBarium mealは6時間で胃から排出された。 PPD急性犬ではBarium mealは胃から排出されたが、その時間は遅延しており、胃内容の停滞および幽門輸の開存が確認された。また、PPPD急性犬の空腹時胃前庭部では、短時間の不規則な強収縮群が出現し、IMCは出てこなかった。 PPPPD慢性犬では術後14日目になると、胃体部、前庭部にIMCに類似した強収縮群が出現したが、周期、持続時間とも不規則であった。この収縮は術後28日目にも観察された。この収縮群とIMCとを比較してみると、術後14日目の収縮群の発生周期、持続時間はIMCに比べ有意に短縮していた。術後28日目では持続時間は有意に短かったが、発生周期に差は見られなかった。 PPPD術後早期の犬の幽門輸は開存していたが、胃体部、前庭部にIMCは出現せず、持続時間の短い強収縮群が不規則に発生するために、胃内容停滞が惹起されるものと考えられた。慢性期にはIMC類似の強収縮群が観察されるようになり、これが胃内容排出遅延の回復過程を示すものと推測された。
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