研究概要 |
【本年度の目的】われわれはこれまで胃癌の増殖能や悪性度に高ガストリン分泌状態が重要であることを報告してきた。どのようなメカニズムで高ガストリン分泌が起こるかについて、本年度、われわれが開発した分離法により得られたG細胞を用い、各種サイトカインのG細胞に対する影響について検討を行った。また、胃癌の臨床材料を用いガストリン受容体の発現についても検討を行った。 【方法】 単離G細胞は剥離細切したモルモット幽門洞粘膜を酵素処理した後、細胞浮遊液をPercoll密度勾配遠心法により分画して得られた。G細胞はRIA法、酵素抗体法、電顕によって確認した。得られたG細胞浮遊液をculture well上で初代培養(36時間)し単層培養系を作成した後、IL-1 β,TNF αにてstimulationした(controlはNeuromedin C,Bombesin)。サイトカインのstimulation後、培養上清と培養細胞中のガストリン濃度をDainabot社製RIA kitにて測定した。また、胃癌組織の新鮮凍結標本を用い、RT-PCR法でガストリン受容体遺伝子の発現について検討を行った。 【結果】1)IL-1 β刺激後、濃度依存性にG細胞からガストリン分泌の促進が観察された。G細胞内ガストリン濃度においても増加がみられた。 2)TNF-α刺激後も濃度依存性にG細胞からガストリン分泌の促進がみられた。細胞内ガストリン濃度においても増加がみられた。 3)胃癌組織におけるガストリン受容体の遺伝子発現は約10%に認められた。 【結語】IL-1 β、TNFーαともに濃度依存性にG細胞からガストリン分泌と産生の促進がみられたことから胃癌における高ガストリン分泌のメカニズムにサイトカインの影響が重要であることが考えられた。
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