研究概要 |
食道早期癌のうち粘膜上皮(m1)と粘膜固有層(m2)にとどまるものは、リンパ節転移をきたすことはなく、内視鏡的粘膜切除術(EEMR)の絶対的適応である。しかし、粘膜筋板に浸潤するもの(m3)や粘膜下層表層(sm1)に達するものでは10〜15%にリンパ節転移が認められる。この群でEEMRの適応となるものはどんなものかを明かとした。 全国諸施設から外科的根治術を施行し、病理組織学的に深達度m3,sm1とされた症例124例を集めた。m3 65例sm1 59例で、このうちリンパ節転移を有していたものはm3 9例13.8%,sm1 13例22.0%合計22例17.7%であった。これらにつき腫瘍長径,臨床病型,分化度,浸潤度,脈管侵襲とリンパ節転移の関係を調べた。 (1)腫瘍径とリンパ節転移との関係はn(+)例の31.8%が4cm以上で、4cm以上の21.2%がn(+)であったが、両者に一定の傾向が認められなかった。 (2)O-I型,O-III型,IIa+IIc型では他の病型より有意(p<0.05)にリンパ節転移が多かった。 (3)分化度では高分化型5.6%,中分化型18.2%と比べ低分化型は60.0%とリンパ節転移率が高かった。 (4)浸潤度ではinfα0%,infβ19.1%と比べ,infγは71.4%とリンパ節転移率が高かった。 (5)ly(+)はリンパ節転移が36.4%とly(-)2.9%に比べ有意(p<0.05)にリンパ節転移が多かった。 臨床的にEEMRの適応外と考えるO-I型,O-III型,OIIa+IIc型や腫瘍径4cm以上を除くとこの中にリンパ節転移を有する症例の81.8%が含まれる。これ以外の症例にEEMRを適応してみてmod.diff.でinfβly(+),infγ,poorly.diff.のものを外科的切除術の適応とするとsensitivity100%でリンパ節転移陽性例を外科的治療することとなる。また、内視鏡所見からEEMRの適応外と考えられるものの中に、リンパ節転移を有するものの82%が含まれていることになる。m3,sm1も積極的にEEMRを適応していくべきと考える。
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