研究概要 |
早期・表在食道癌、とくに粘膜癌の増加により、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が急速に普及してきた。粘膜上皮内(m1),粘膜固有層(m2)にとどまるものは絶対的適応となるが、粘膜筋板(m3)や粘膜下層表層(sm1)のものの大部分もリンパ節転移はなく、外科的切除術の侵襲および術後のQOLへの影響を考慮すると、可及的にEMRを適応したい。 m3・sm1癌の悪性度診断を行うために、食道表在癌の深達度別に第VIII因子,Ki67,p53,PCNAなどにつき検討し、その病態を研究した。血管新生については、第VIII因子関連抗体を用い、腫瘍増殖についてはKi67のモノクローナル抗体であるMIB-1を用いて免疫組織化学的局在を調べ、computer image analizerで解析した。 血管新生をみるとm1・m2と比べ、m3から腫瘍内平均血管面積の増大が認められた。また、m3・sm1群でリンパ節転移(n)や脈管侵襲(ly,v)の関係をみると、陽性のものは陰性のものより腫瘍外平均血管面積は有意に高かった。 腫瘍増殖をみると、やはりm1・m2に比べm3からMIB-1のLabaling Index(LI)の有意の増加を認め、また、n,ly,の陽性のものは陰性のものよりLIが有意に高かった。 食道表在癌ではm1・m2からm3へ増殖する過程で、血管新生や増殖能の増加が認められ、また、n+ly+などの悪性度因子とも有意に相関していることが判明した。現在、さらにp53,PCNA,などについても結果が出つつある。
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