昨年度に引き続き、Wistar系雄性ラットで70%肝切除と同時に胆道外瘻を作製し分泌型IgA(sIgA)の残肝における肝内胆管細胞の機能的再生に及ぼす影響を検討した。肝切後、腹腔内にmini-osmotic pumpを留置し、そこから300〜600μg/kg/dayのsIgAを投与した群では、対照群として生理食塩水を投与した群に比較して、胆汁中重炭酸イオン濃度がやや高い傾向があったが、有意差は認められなかった。そこで、実験モデルを変更することにした。胆道閉鎖症は発症早期に肝移植などの手術を行う以外に有効な治療方法はないが、動物モデルでは小動物にロタウイルスを感染させる方法が多い。この方法では危険も伴うため、mini-osmotic pumpを用いてモルモットの胆嚢内に炎症誘起物質を注入することによって、胆道閉鎖症に類似したモデルを作成することに成功した。このモデルを用いて、sIgAの胆道上皮再生促進作用を現在検討している。炎症誘起物質の種類や量によって、胆管上皮の線維化の程度が異なるので結論はまだ出ていないが、preliminary reportとして本年7月の第52回消化器外科学会総会の報告する予定である。また、臨床例で血清sIgA濃度測定の意義を検討してきたが、ヒトでもsIgAが肝内胆管上皮再生を促すことが示唆された。この結果は平成9年の第97回日本外科学会総会に報告すると同時に英文誌に投稿し、掲載された。モルモットでの実験結果も平成10年の秋頃にまとまる予定であり、しかるべき雑誌に研究成果を投稿する予定である。
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