研究概要 |
Wistar系雄性ラットの70%肝切除後,分泌型IgA(s1gA)投与の残肝における肝内胆管の機能的再生に及ぼす影響を検討してきた.肝切後,腹腔内にmini-osmotic pumpを留置し,そこから100〜600μg/kg/dayのsIqAを投与した.また一部のラットについてはIGF-1を併用した.対照群として生理食塩水を投与した群と比較して,sIgA投与群では胆汁中重炭酸イオン濃度がやや高い傾向にあったが,統計学的有意差は認められなかった.そこで,phorbor myristate acetateをラット胆道内に投与して肝内外胆管の慢性炎症を誘発し,このモデルでsIgAおよびIGF-1の胆管粘膜修復促進作用の有無を検討した.病理組織学的検索,胆汁量などの胆管機能の面においても,sIgA,IGF-1の明らかな効果は認められなかった. 動物実験では一定の成果を得ることができなかったが,同時に進めた臨床研究ではsIgAが胆道再生を促進するという間接的証拠を得ることができた.すなわち,手術後の胆汁鬱滞性肝障害の程度と血清sIgA値との間に正の相関関係があり,しかも血清sIgA値と胆汁sIgA値が正の相関を示したことから,肝内細胆管障害時にsIgA分泌が亢進することが示唆された.ヒトと小動物では肝・胆道.腸管におけるsIgAの動態がかなり異なっており,今後,慎重に研究を進めるべきであると思われる.
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