研究概要 |
外来神経切離後の消化管機能を明らかにするために、ラットを用いて、壁内神経叢の変化を免疫組織学的手法を用いて解析した。外来神経を除去することで腸管壁内神経叢に何らかの影響を与えており、特に術後早期では、腸管の収縮運動に関与しているcholinergic neuronの障害が強く認められた。臨床研究として、約10年程前より胃全摘後のQOLの向上を目指して空腸pouchを用いた再建術式を採用した。従来のRoux-Y法(RY),pouch・R-Y法(PR),pouch・interposition法(PI)の3群(各群10例)を設定し、randomized controlled studyにて術後愁訴、摂食量、体重、各種栄養指標、内視鏡所見およびRI胃排出試験を用いて比較検討した。3群間ではPR法は極めて有効な術式であり、pouch造設による有用性が示唆された。しかしPI法は生理的ルートにもかかわらず、つかえ感が強くQOLは不良であった。この原因として(1)pouchから十二指腸までの空腸導管の長さや(2)有茎空腸の血流・神経支配の障害などにより影響を受ける可能性が考えられた。このため、(1)に関しては導管の長さを20から10cmに短縮、(2)に関しては前述の基礎的研究の結果を参考として、約10cmの犠牲腸管をとり間置空腸腸間膜の血行・神経支配を最大限温存するなどの改良を加えた。本術式を6症例に採用したところ、つかえ感はほとんどなく摂食量、排出能ともに良好となった。以上の基礎的および臨床研究より、術後早期の腸管運動の回復には外来神経の温存が望ましいと考えられた。
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