我々は以前よりlamininの組織化学を用いて様々な検討を行ってきた。Lamininは神経周膜および神経線維束を明瞭に染色出来ることから、直腸癌神経浸潤の検討に有用ではないかと考えた。そこでlaminin染色とS-100染色、鍍銀染色、HE染色の比較を連続切片で行ったところ神経浸潤陽性率はそれぞれ47.8%、58.3%、19.4%、25.0%となった。HE染色は染色が容易であるが小さい神経組織の同定が困難なことがある。鍍銀染色は神経周膜の染色性は良好であるが間質の結合織の細網線維が染色され神経周膜との区別のつきにくいことがある。S-100染色は神経線維束は明瞭に染色されるが神経周膜は染色されないため神経線維周囲への癌浸潤の判定が困難なことがある。Laminin染色は神経周膜と神経線維束が明瞭に染色され、小さな神経組織の同定が容易であり、神経浸潤の判定に最も有用であると考えられた。Laminin染色を用いると神経浸潤形式は神経線維束型(10.7%)、神経周囲間隙型(52.0%)および両者の混在型(37.3%)の3つに分類でき、神経周囲間隙型が神経浸潤形式として重要であると考えられた。今後さらに検討を続け、他の免疫組織染色と組み合わせ、直腸癌神経浸潤のメカニズムや局所再発との関係を解明したい。
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