研究概要 |
これまで大腸癌では,Thomsen-Friendenereich抗原(T抗原)の発現が癌進行度や肝転移と関係があると報告されており,またT抗原をマスクしているシアル酸をNeuraminidase(Nase)処理で除くことによって得られるCryptic T抗原も肝転移に関係するという報告もみられる。これらの関連を解明するためにNase処理したColon26細胞についてモノクローナル抗Thomsen-Friedenreich(TF)抗体処理を行い,細胞表面のCryptic T抗原の発現を解析し,肝転移への影響について検討を行った。 【結果】BALB/c系雌性マウスにColon26細胞を門脈内投与し肝転移モデルを作成,3週間後に肝臓を摘出し,肝表面の転移結節数を測定したところ,平均1.6]SY.+-.[0.9個であったのに対して,Nase処理CoLoN26細胞を接種すると平均6.4]SY.+-.[3.9個と肝転移結節数の増加を認めた。Nase処理を行ったColon26細胞にモノクローナル抗Thomsen-Friedenreich(TF)抗体(A78-G/A7)で処理すると,平均1.9]SY.+-.[1.3個の転移であり肝転移が抑制されたのに対して,コントロールとしてマウスIgMmyeloma proteinで反応させた群では平均5.2]SY.+-.[2.9個の転移結節であり,有意差はなかった。 Nase処理が十分に行われていることを確認するために,Nase処理Colon26細胞と無処理Colon26細胞をA78-G/A7で反応させた後,二次抗体としてFITC標識抗マウスのヤギIgMを用いてFACScanにより解析したところ,Nase処理後の細胞ではほぼ100%がA78-G/A7と反応し,Nase処理後にCrypticT抗原が発現していることが確認された。
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