前年度のヒト病理解剖例による経臍静脈的カテーテル誘導の試技をうけて、平成9年度は、経臍静脈的門脈塞栓術(UIPE)の臨床応用をめざした。対象としたのは胆道悪性疾患であったが、適応となる症例が極めて少なく、UIPE予定となったのは胆嚢癌の二例のみであった。すでに、本研究代表者は、経回結腸静脈的門脈塞栓術(TIPE)手技をイヌ成犬において20匹、ヒトにおいて58例経験し、また共同研究者はヒト臨床において100例以上のTIPEの経験をもっており、今回のUIPE臨床への適応には問題なしと判断した。手技の前には本人と家族に十分説明し、了解を得た後にUIPEを施工した。最初の症例はUIPEも肝切除も予定どおり順調に施工できたが。二例目は臍静脈へのカテーテル挿入が不成功にとなったため、急遽塞栓手技を経皮経肝的門脈塞栓術(PTPE)に変更した。何れの症例も、残肝予定の肝組織の代償性肥大は良好で、根治的拡大肝切除を安全に行うことができた。成功確立は50%ではあったが、当初の目的は達成できた。今後さらに症例を重ね、安全で確実な手技の確立を目指す方針である。
|