研究概要 |
目的:拡大肝葉切除術を安全に行うべく開発された門脈塞栓術には、現在、経回結腸静脈的塞栓(TIPE)と経皮経肝的塞栓(PTPE)とがあるが、手技の安全性と確実性をさらに向上させる目的で経臍静脈的門脈塞栓(transumbilical portal embolization,TUPE)を考案し臨床応用を目指した。 方法:経臍静脈的カテーテル誘導はすでに諸家により確立された手技であり、諸家の報告を参考に、初年度はヒト病理解剖においてカテーテルの挿入訓練を行った。研究組織構成員はいずれも臨床でヒトTIPEの経験は十分であり初年度の経験をふまえて、次年度は十分な患者・家族説明の後、胆嚢癌の一症例にこの手技を適応した。 手術手技:当施設内の血管造影室において、全身麻酔下に臍上部の小切開で開腹し、肝円索を露出・切開後ガイドワイヤー誘導下に門脈塞栓用バルーンカテーテルを誘導し、切除予定側の肝組織を塞栓した。塞栓物質はgel fom powder 2g,thrombin Powder 5000単位、urografin 40mlを混合したものを使用した。まず肝右葉の後区域の門脈枝を続いて前区域の門脈枝を塞栓した。 結果:残肝予定区域である肝左葉の肝CT volumetryによる容量は塞栓後2週間後には、30%から46.6%と明らかに増大した。手術は予定どうり平成9年7月8日に胆管・胆嚢切除・リンパ節郭清・肝拡大右葉切除(再建は総肝管空腸吻合)を施行し、術後も合併症なく術後37日目に退院した。 考察:今回は我々は一例のヒト胆嚢癌症例においてTUPE手技を臨床応用し得た。今後さらに症例を重ねて手技の向上に貢献する方針である。
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