研究概要 |
肺移植のモデルとしてラットの左肺動脈をクランプすることにより温阻血モデルを作製した.またARDS(急性呼吸窮迫症候群)のモデルとしてエンドトキシンを持続静注(5mg/kg/hr)した肺障害モデルを作製した.そして我々が開発した肺微小循環における白血球の粘着と過酸化水素産生の観察・解析法を用いて,これらのモデルにおける白血球動態を解析した.また接着分子ICAM-1に対する中和抗体(1A29)を2mg/kgで投与してその効果を検討した.そしていずれのモデルにおいても接着分子ICAM-1をblockすると白血球による過酸化水素の産生が抑制されることが明らかとなった.しかし白血球の肺毛細血管への集積を抑制することはできなかった.以上の結果より接着分子ICAM-1は白血球の肺毛細血管接着後の過酸化水産生に重要な役割を果たしていることが推察された.以上より肺毛細血管上に発現するICAM-1をtargetとしてantisenseを設計してその投与をin vivoで種々の方法を使って投与することを検討した.しかしantisenseを安価に大量に作製することに限界があり,費用の点を考慮するとantisenseを使った予防的遺伝子治療は現段階では断念せざるを得なかった.今後はantisenseを安価に大量に生産する技術の開発が望まれる.
|