研究概要 |
(目的)ヒト悪性中皮腫の遺伝子解析により,NF2遺伝子の突然変異が見られることがわかってきている。NF2遺伝子による胸膜中皮腫遺伝子治療モデルを確立するために,悪性胸膜中皮腫手術例で腫瘍と腫瘍隣接胸膜のDNAを抽出してNF2遺伝子の突然変異解析を行った。また悪性胸膜中皮腫および肺癌癌性胸膜炎症例において免疫組織化学的にKi-67,p53,NF2遺伝子の発現を検索し,肺癌症例では病理組織学的所見,臨床予後とを対比,検討し予後因子としての有用性につき検討した。(対象と方法)対象症例は胸膜中皮腫切除例3例と腫瘍隣接胸膜2例および肺癌癌性胸膜炎切除例65例である。フエノール・クロロホルム法によりDNAを抽出し,PCR-SSCP法により遺伝子の突然変異をスクリーニングした。また抗NF2抗体(C-18,-19),抗Ki-67抗体(MIB-1),抗p53抗体(DO-7)による免疫組織学的検索を行った。(結果および結語)設定したPrimerでバンドが検出できたexon3,exon4,exon7,exon13,exon16の各exonについて行ったSSCPでは3例の胸膜中皮腫及び胸膜には,明確に確認できるNF2遺伝子の変異は見出されなかった。また抗NF2抗体による免疫染色の結果も同様であった。胸膜中皮腫は3例中2例でp53陰性,Ki-67標識率は10%以下であった。肺癌症例の検討では,Ki-67標識率は独立した有意の術後予後因子であり,臨床予後を良く反映することが判明した。以上より胸膜中皮腫症例をさらに集積することによりNF2遺伝子の突然変異の検索およびKi-67標識率との相関につき検索する予定である。
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