研究概要 |
従来より,我々は細胞膜保護作用を有する非還元性二糖類trehaloseの肺保存における効果に着目しtrehaloseを基礎としたET-Kyoto液(ET-K),ET-KをベースにN-acetylcysteine(NAC),dibutyryl cyclicAMP(dbcAMP)、nitroglycerin(NTG)の3つの物質を加えたnewET-Kyoto(newET-K)を作製し、犬肺保存実験で良好な結果を報告してきた。今回、我々はEx vivoラット再潅流モデルを用いて、ラット肺保存におけるnewET-Kの効果をEC,UW液と比較し検討した. (対象と方法)Perfusion circuitは3匹のrat(heparin 1000IU/rat投与)から得られた30mlの新鮮血で始動された。保存後の心肺ブロックの右肺が切除され、心-左肺ブロックは37℃,湿度100%のに維持されたchamber内のperfusion apparatusに置かれた。静脈血用リザーバーからdouble head roller pumpによって血液はPAを経て左肺に潅流される。左肺からの流出血は貯血用リザーバーに集められ、pumpにてdeoxygenator lungに潅流された。実験群は4groupあり、第1のgroup(Fresh group:n=6)においては、PAflushはsalineで行われ、心-左肺ブロックは直ちに再潅流された。2-4のgroup(group2;newET-Kgroup:n=6),gourp3;UWgroup:n=6,gvoup4;ECgroup:n=6)においては、PAflushは各々newET-K+PGE1,UW+PGE1,EC+PGE1で行われ、心-左肺ブロックは17hours保存後再潅流された。 (結果)EC群では、6頭とも再潅流後20分の間に肺水腫による気管内チューブの水分により実験肺の換気が困難となり、測定中止となった。newET-K群とUW群のShunt率,pulmonary arterial pressure,and peak inspiratory pressureはEC群より有意に良好な値を示し、Fresh群のそれとほぼ同等であった。 (結論)newET-K液は、EC液よりも優れた保存後肺機能を示し,UW液と同等であり,臨床肺移植におけるドナー肺の増加に寄与することが期待された.また,本Ex vivoラット再潅流モデルは簡便で信頼性も高いことから,肺保存に関する研究に広く使用可能であり有用と考えられた.
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