1.至適遮断時間の決定 日本白色家兎を人工呼吸下に左第4肋間開胸を行い、ヘパリン2mg/kgを投与した後に左総頸動脈分岐直後の胸部大動脈を60分、30分、20分、15分間遮断した。遮断解除し再潅流とし、48時間飼育した。20分から60分の虚血で48時間後には全ての兎が完全対麻痺の状態となった。しかし、15分間の虚血では兎には麻痺は発生せず、モデルとしては20分の虚血再潅流が適当であることが判明した。 2.プロテアーゼインヒビターの脊髄虚血再潅流に対する保護効果に関する検討 コントロール群では虚血前にヘパリン2mg/kgのみを投与し、前投与群ではヘパリンとともにプロテアーゼの阻害剤(Calpain inhibitor-1)を10μmol/kg虚血前に投与した。また、全投与群では、遮断解除直前にもプロテアーゼの阻害剤を投与した。神経学的観察は、術後24および48時間に行なった。その結果、コントロール群では24時間後には6割の兎が完全対麻痺となり、残りもgrade 2の麻痺となった。そして48時間後では全ての兎がgrade 0の完全対麻痺となった。これに対し、前投与群では、24時間後には6割の兎はgrade 3の軽度麻痺に留まり、48時間後では約30%が正常ないし軽度麻痺のgrade 4〜grade 3であり、完全対麻痺となったものは3割に過ぎなかった。また全投与群においても前投与群と同様の結果を示しており、虚血前にプロテアーゼ阻害剤を投与する事が虚血再潅流障害の予防に大きく関与しているものと思われた。 3.蛋白同定のための抗体作成 150-kDのα-calspectinの分解産物に対する抗体を作成したが、purityが得られず、同抗体の使用を断念し、今後脊髄の蛋白の分解をWestern blottingにて同定して行く予定である。
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