1.Western Blotting 神経学的検討とは別個に20分の脊髄虚血の後に再潅流を60分行い、脊髄を摘出する。虚血前にcalpain inhibitorを投与するか否かで同様に2群に分けた。正常(虚血なし)の脊髄と2時間虚血(完全な脊髄麻痺発生モデル)も対照として作成した。摘出した脊髄をホモジナイズし、Western blottingによりcalspectinの分解の程度を観察しproteaseの役割を検討した。 抗兎150-kDのα-calspectinの分解産物に対する抗体を作成したが、purityが得られないためにその使用を断念した。抗ヒト抗体を用いたWestern blottingでは、40分虚血後60分再潅流した脊髄において、150-kDのα-calspectinの分解産物のバンドが強く描出されており、細胞膜の裏打ち蛋白であるcalspectinが虚血障害により分解されていることが判明した。このことはcalpain inhibitor投与により細胞障害が軽減されることの裏付けとなった。 2.組織学的検討 摘出した脊髄をホルマリン固定した後にHematoxylin-Eosin染色にて染色し顕微鏡的に脊髄前角の神経細胞を中心に観察した。 正常脊髄およびcalpain inhibitor投与群では、脊髄前角の神経細胞は形態が保たれているのに対して、二時間の虚血による完全に細胞障害を起こした脊髄やcalpain inhibitor非投与群の神経細胞は、核の空包化が認められ、明らかな細胞障害の所見を呈した。
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