肺葉性気腫は新生児期に発症する比較的稀な疾患であるが、その発生機序は今尚明らかではなく、本疾患の実験的モデルはその究明に不可欠である。 雑種幼豚(n=5)を用いて左主気管支軟骨除去を行い手術的左主気管支軟化症モデルを作成した。気管支内視鏡を用いた気管支内腔からの観察では呼気、吸気、咳嗽の際に軟化症様変化が確認されたが、1ヶ月間の観察期間中には、限局性(左肺)の気腫性変化は認められず、喀痰排泄障害に伴う肺炎所見を認めた。 Wister系雄性ラット(n=29)を用いて、手術的気管支狭窄モデル及び化学的気管支軟化モデルが作成され1ヶ月間観察された。更に上記モデルに強制陽圧を加えることも試みた。高度狭窄を認めた狭窄モデルでは無気肺を形成し、狭窄の比較的軽度な例では気管支軟骨の支持力が回復しほぼ正常な所見を呈した。パパインを用いた限局性気管支軟化症モデルでは傍胸膜領域に限局した左肺気腫を認めたが、肺葉性気腫に認められる汎肺葉性の気腫ではなかった。強制陽圧付加群でも汎肺葉性変化は認められなかった。 気管支狭窄モデル、気管支軟化モデルは形成されたが、肺葉性気腫の如く汎肺葉性の気腫の出現は認められなかった。 更に強制陽圧の条件を検討するが、現在までの結果では単純な軟化狭窄では気腫の発現は困難であり、新生児の持つ未熟性が肺葉性気腫の発現には不可欠であると推測される。今後は胎児期、新生児期の動物に同様の手技を加え肺葉性気腫の発現を観察したい。
|