研究概要 |
【目的】calpain(CL)は細胞内に存在するCa^<2+>依存性蛋白分解酸素で、細胞骨格や機能蛋白を分解し細胞障害を引き起すと考えられる。4℃12時間単純浸漬保存および再灌流がもたらす心筋細胞内μ,m-CLへの影響と、その阻害剤(calpain inhibitor I)による保護効果を解明する。【方法】Wistar male rat(280-330g)摘出心をUWS(阻害剤+:I群 n=21、詐害剤-:N群 n=19)で単純浸漬した後、37℃KHBbuffer 90cmH_2Oで再灌流した,30分のnon-working再灌流の後、10分毎に30分間心機能を測定した。灌流実験終了後、冠流出液中の逸脱酸素(CK,GOT,LDH)および心筋水分含量を測定した。また両群の非再灌流心(I',N'群)および新鮮心(C群)も含め各心室筋を陰イオン交換クロマトグラフィーにかけμ,m型を分離した。μ,m-CL proenzymeを認識する抗体を用いて各々western blotし、bandの濃淡をNIHimageで画像解析した。各群の前駆型μ,m-CLをC群に対する%で比較した。【結果】再灌流時、N群に比しI群で有意に良好な心機能が得られた。心筋逸脱酸素はI群で有意に抑制できた(P<0.01)。前駆型m-CLは保存のみでは両群に有意差なく残存し、再灌流よりN群で有意に低下した(P<0.05)。一方,前駆型μ-CLは保存のみでI群に比しN群で有意に低下した(P<0.01)。【結語】4℃12時間の単純浸漬保存中にも前駆型μ-CLは著しく減少し、再灌流により前駆型m-CL顕著に減少した。心保存液にCL阻害剤を添加することにより保存中ならびに再灌流時の前駆型CLの減少をともに抑制し、活性型CLによる心筋障害を軽減することが可能であった。
|