研究概要 |
平成8年度は心室のrapid pacingによって作られた雑種成犬の心不全モデルにおいて,rapid pacing終了後にモデルがどのような自然経過をとるかにつて,また作られた不全心の病理学的検討結果を発表した.4週間のrapid pacingによって得られた心不全モデルは一過性に高度の心不全を来すが,rapid pacing中止4週後では著明な改善傾向を示し,6週後ではrapid pacing前の状態に復することが判明した.今日このようなrapid pacingによって不全心を作製して実験的検討がなされることが多くなったが,モデルの自然経過を十分認識する必要がある点を提起した. また,生後9-10週の子犬に対して,左広背筋を用いてCardiomyoplastyを施行し,被覆した広背筋に電気刺激を与えない環境下で心臓,被覆した広背筋は固体の成長につれてどのように変化するかを検討した.本実験では観察期間を6カ月としたが,この間に実験犬は体重が三倍増となった.Cardiomyoplastyを施行した犬の心臓は,Cardiomyoplastyを施行しなかった犬に比べて重量増加が少なかった.被覆した広背筋には脂肪変性や筋線維の大小不同があったものの固体の成長に伴って成長した.しかし被覆しなかった右広背筋に比べてその重量増加は少なかった.またCardiomyoplastyを施行した実験犬で左室の圧-容量曲線を描いたところ,左室の拡張障害は確認されなかった.以上から,Cardiomyoplastyの小児症例への応用の安全性が確認された.これについての論文は現在学術雑誌に投稿中である.
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