1. 本研究期間以前から引き続いて研究を継続した。まず、心室のrapid pacingによって心室が如何なる形態変化を来し、rapid pacingの中断により如何なる自然経過を辿るかを検討した。4週間のrapid pacingによって、拡張型心筋症モデルが形成されるものの、それは一過性で、rapid pacingの中断とともに心内腔は縮小し、約6週後にはほぼ正常化する事が判明した。これはrapid pacingによる心不全モデルの限界を示すものである。 2. 生後3カ月のビーグル子犬に広背筋を被覆し、成長に伴って如何に広背筋が形態を変化させるかを6カ月から1年間にわたって検討した。広背筋は心臓を包む鋳型の如く形態変(conformational change)を来すことが、子犬の成長課程にも観察された。また広背筋は被覆しなかったものに比べて重量や体積は少なかったものの心臓の成長とともに成長し心臓の拡張障害を来すことなく心臓を完全に被覆するまでに至った。組織学的には、被覆した広背筋に中等度以下の線維化や脂肪浸潤が見られたが、筋線維は十分に保持されていた。これは、dynamic cardiomyoplastyの小児への応用が可能であることを示唆していると考えられた。 3. 背筋が質・量ともに保持されていた症例は不整脈などに起因する突然死であったが、広背筋の量・質が不十分であった症例では、心不全の進行によって死亡した。これらは、dynamic cardiomyoplastyの心補助効果が被覆広背筋の質・量によって規定されることを示唆していると考えられた。
|