研究概要 |
心停止後温阻血下放置後の肺保存による移植臓器としての可能性の検討として,昨年度は摘出肺の灌流圧や灌流量についての設定に関する検討を行った.そこで,この結果を基に初期低灌流量,低灌流圧による再灌流障害の検討に加えて,灌流時の肺動脈血管内皮障害の軽減を目的にサーファクタントの気道内投与による検討を行った.なお,これまでの検討から,使用する動物はWistar rat(200〜255g,平均221g)を使用し,過量のエーテル麻酔による安楽死とした.1群:死後直ちに摘出後気管内挿管して人工換気(5ml/kg,50bpm,room air,PEEP=0)を行うと共に肺動脈より生理的食塩水の灌流(50ml/min)を開始し1時間継続した.2〜4群:死後30分後に摘出.2群では摘出後1群と同様に直ちに1時間の灌流を施行した.3群では肺動脈内圧が40mmHgを越えないように徐々に灌流を開始,50ml/minとなったところで1時間の灌流を行った.4群では再灌流開始直前に,気道内へサーファクタント(100mg/kg,BW.)を注入し,3群と同様に灌流を行った.再灌流開始1,5,15,30,60分後に肺動脈圧,気道内圧を測定した.なお,肺静脈圧は0mmHgに設定した.また,上記再潅流後,肺動脈血管内皮の障害度を検討する目的で右肺動脈から0.4%トリパンブルー液30mlを注入した,さらに,左肺を用いて湿乾重量比を測定した.以上から,再灌流時の潅流圧ならびに流量については,肺動脈内圧が40mmHgを超えないように低流量から開始するとともに,再灌流開始直前にサーファクタント気道内注入を行うことによって肺動脈管内皮障害の軽減とともに肺水腫を予防し得る可能性が示唆された.
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