研究概要 |
悪性腫瘍では一般にグルコース代謝が亢進している。肺癌におけるグルコース取り込み増加の意義を調べる目的で、グルコース輸送蛋白遺伝子(GLUT)をPCR法で増幅し、予後との関係を検索した。対象は外科切除を行なった肺癌327例で、ホルマリン固定標本よりGLUT1,GLUT3遺伝子増幅を行ない、シアリルルイスX(SLex)ならびに増殖細胞核抗原(PCNA)の免疫染色の結果と対比した。現在までのところ以下の結果が得られた。 1.GLUT1の増幅頻度はGLUT3よりも有意に高く、グルコースの取り込みにはGLUT1の方がGLUT3よりも重要な役割を担っていると考えられた。 2.GLUT1,GLUT3の増幅はPCNA染色と相関し、グルコース取り込みが細胞増殖に関係していることが判明した。 3.GLUT1増幅はSLex染色とも相関し、細胞内に取り込まれたグルコースSLex合成にも関与している可能性が示唆された。 4.SLexの最終合成過程にはフコース転移酵素(FT)とシアル産転移酵素(ST)の働きが必要であるため、GLUT1とFT、ST遺伝子増幅の関係を調べたところ、両者の間に正相関が認められた。 以上の結果を踏まえ、次年度からGLUT1、GLUT3増幅、SLex染色と予後との関係を調べる予定である。
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