研究概要 |
悪性腫瘍では一般にグルコール代謝が亢進している。肺癌におけるグルコール取り込み増加の意義を調べる目的で、切除標本を用いて輸送蛋白遺伝子(GLUT1,3)のPCR増幅、グルコール輸送蛋白・増殖細胞核抗原(PCNA)・シアリルルイスX(SLeX)の免疫組織染色を行った、またGLUTとSLeX合成に関与するシアル酸転移酵素(ST)、フコース転移酵素(Fうc-T)との関係をみるためにST、Fus-T遺伝子のPCR増幅も併せて行った。対象は1980年から1993年までに外科的治癒切除を行った肺癌327例である。 ヒトST、Fus-T遺伝子は各々5種類が同定されているが、SLeX染色の程度とST、Fus-T遺伝子増幅の関係からSLeXの合成にはそのうちST3N、Fuc-TVIIが最も強く関与していた。2.GLUT1増幅の頻度はGLUT3よりも有意に高く、グルコースの取り込みにはGLUT1の方がGLUT3よりも重要であると考えられた。GLUT1、GLUT3増幅はPCNA染色の程度と相関していたが、SLeX染色の程度はGLUT1のみと相関していた。3.GLUT1遺伝子はST3N、Fuc-TVII遺伝子と共増幅していた。4.GLUT1遺伝子増幅例の予後は非増幅例よりも有意に不良であり、GLUT1は多変量解析においても有意の予後因子であった。 以上よりグルコース取り込みに関与するGLUT1は細胞増殖に加えてSLeX合成にも関係しており、その増幅は肺癌において予後因子になり得ると推察された。
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