研究概要 |
TCPCを行った10例に対し肺血流ドプラーおよびANP,BNPの検討を行うことができた。ANP,BNPに関しては症例数が少ないせいもあり、バラツキが大きく、残念ながら一定の傾向をしめすことができなかった。10例中、肺血管内の血流パターンが拍動性血流パターンを示した症例(I群)は6例で、非拍動性パターンを示した症例(II群)は4例であった。この群間で比較検討を行った。手術時年齢はI群8.8【+-】5.7歳、II群16.0【+-】9.1歳でI群が低年齢であった。各群の基礎疾患の内訳はI群では三尖弁閉鎖症3例、右室型単心室症3例であり、このうち1例は無脾症の症例であった。II群は純型肺動脈閉鎖症1例、右室型単心室症3例で、やはり1例は無脾症であった。各群の新右房再建術式においてI群では全例自己右房壁を用いたが、II群では自己右房壁が2例、他の2例ではPTFE導管が用いられていた。右房圧(mmHg)のa波はI群では13【+-】5でII群では12【+-】2で各群間に有意差は認めなかった。術後の造影から求めた右房の拡張末期容積指数(ml/m^2)はI群30【+-】5、II群は20【+-】8でI群で高値を示した。また、右房の収縮率(%)はI群33【+-】11、群II9【+-】2でI群で高値であった。以上から1)自己右房壁を利用するTCPCでは右房収縮能の肺血流への参与が得られた。2)この効果を促進する因子として低年齢症例や三尖弁閉鎖症例が挙げられる。3)心房収縮能を温存するには、できるだけ多くの自己右房壁を用いた心房内血流路再建が望まれる。4)今回の検討では症例数が少ないこともあり、心臓ホルモンであるANP,BNPからの評価はできなかった。
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