(目的)本研究の目的は冠微小循環内皮細胞において再灌流時の細胞内Ca2+過負荷がno-reflow現象の進展過程で中心的役割を果たすことをin-vitroの実験系を用いて明らかにすることである。 (方法)体重約300gのS-D系雄性ラットの摘出心から冠微小血管内皮細胞を分離し、37℃、5%CO2incubator内で10%FCSを含む培養液を用いて培養した。7-9日間培養後、内皮細胞特異的な蛍光試薬であるdil-LDLを投与し共焦点レーザー顕微鏡を用いてその取り込みを観察した。細胞内Ca2+濃度は培養内皮細胞に細胞内Ca2+指示薬であるfura-PE3を負荷し、340/380nm蛍光強度比の変化を画像解析装置を用いて観察した。細胞内接着分子(ICAM-1)の発現状態は、培養細胞にICAM-1に対するモノクロナル抗体を作用させて免疫組織化学的に観察した。 (結果)(1)dil-LDLの取り込み実験では、内皮細胞は平滑筋細胞の上に共培養されているのが認められた。(2)内皮細胞内Ca2+は30分間の低酸素環境下で有意に上昇したが、再酸素加時に徐々に低下した。(3)内皮細胞におけるICAM-1の発現は30分間の低酸素直後にはほとんど認められなかったが、再酸素加1時間で明らかな発現がみられ、4時間後、8時間後には著明な発現が認められた。 (考察)以上の成績から、冠微小血管内皮細胞は低酸素状態で細胞内Ca2+過負荷を生じ、再酸素加後細胞内接着分子を過剰発現することが示唆された。
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