研究概要 |
1.p53の機能喪失が,Gl arrestやapoptosisの障害を起こすことにより腫瘍化・悪性転化に深く関わるのならば、p53機能を正常に戻すことにより腫瘍細胞の増殖抑制が可能でなければならない.そこでmutant type p53を持つglioblastoma細胞にadenovirus vectorを用いてwild type p53を導入し,増殖抑制発現の有無をMTTassasyにより検討した.12細胞株中7細胞株において増殖抑制を認め,p53変異が腫瘍発生に深く関与していることが示唆された.今後はp53に対して非感受性を示した細胞株において,p53以外の遺伝子異常の関与について検討する予定である. 2.温度感受性変異p53(34℃でwild type,37℃でmutant type)を持つglioblastoma細胞株を用いて、温度変化に伴う化学療法剤に対する感受性の変化を検討した. (1)温度変化のみによる細胞増殖の度合い(生存曲線)を検討したところ,34℃で細胞増殖率が有意に減少した. (2)温度変化のみによるapoptosis誘導(DNA ladder)の有無を検討したところ,34℃と37℃の両方でDNA ladderを認めなかった. (1)(2)の結果より,34℃で回復するp53の機能はapoptosis誘導ではなく,G1 arrestの誘導であると考えられた. (3)34℃におけるG1 arrest誘導を証明するために,flow cytometryによる細胞周期解析を行ったところ,G1期細胞の増加とS期細胞の減少を認めた. (4)温度変化による化学療法剤に対する感受性の変化をMTT assayにて検討したところ,etoposideとpaclitaxelでは34℃で感受性が有意に低下したが,cisplatinとACNUでは温度変化による感受性の差は生じなかった.よって臨床においてp53変異がある場合にはetoposideやpaclitaxelが治療に選択されるべきである.cisplatinとACNUの抗腫瘍効果にはp53 independent apoptosisが主として関与すると考えられた.今後は,etoposideとpaclitaxelの感受性変化がp53に特異的であるかどうかを,p53に対するantisense oligonucleotide用いて確認する予定である.
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