これまでの我々の研究で、一酸化窒素(以下NO)は培養神経膠腫細胞に対して増殖抑制作用を有することが明らかとなった。そこで平成8年度の本研究では、増殖抑制作用の小さい低濃度のNOが培養神経膠腫細胞の放射線感受性を高めるかどうかを検討した。実験に用いたのはラット神経膠腫細胞(C6)である。NO発生剤はS-nitroso-N-acetyl-penicillamine(以下SNAP)とsodium nitroprusside(以下SNP)を用いた。C6細胞の放射線感受性は、薬剤添加後にX線照射を行い、その後形成されるコロニー数から評価した。その結果、SNAPあるいはSNPの存在下では、X線照射後のC6細胞のコロニー形成率は濃度依存性に低下し、160μMのSNAP、SNPはそれぞれC6細胞の放射線感受性を3倍、2倍に高めた。以上の結果からNO発生剤であるSNAPとSNPが、悪性神経膠腫の放射線増感剤として有望であると考えられた。平成9年度にはラット脳腫瘍モデルを用いて、in vivoにおける抗腫瘍効果を検討する予定である。
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