研究概要 |
悪性神経膠腫の15例に対して、壊死巣とFas,Fas-L,ICE,ICH1,CPP32の発現をmRNAおよび蛋白レベルで観察した。RT-PCRではfas,およびICEがコントロール脳とlow grade astrocytomaには発現が見られなかったが、悪性神経膠腫では全例に発現がみられた。fas-L,ICH1,CPP32はコントロールを含めたすべての症例に発現がみられた。神経膠芽腫にみられる壊死巣との関係は、免疫組織化学的検索では、FasとICH1が壊死巣周辺の腫瘍細胞にのみ発現がみられたのに対して、ICEおよびCPP32のprecursorは壊死巣周辺の腫瘍細胞を含めて、全体に散在していた。Fas-Lは壊死巣と関係なく瀰慢性に発現がみられた。興味深いことに、ICE,ICH1およびCPP32の神経膠芽腫における発現は細胞質のみならず、核にも認められた。Fas,Fas-L,ICE,ICH1,CPP32のシーケンスをおこなったが、神経膠芽腫においては、点突然変異の異常はみられなかった。壊死巣周囲にはTUNEL法にて、多数のアポトーシスが観察された。神経膠芽腫におけるアポトーシス誘発遺伝子のカスケードは1)Fas-Fas-L系からICE,CPP32にいたる経路、2)低栄養状態から誘発されるICH1が過剰発現する経路、3)Fas以外からCPP32が過剰発現する経路の三つが考えられた。現在はCPP32とICH1がいかなる条件の時に核内に移行するのか、培養細胞を用いて検索中である。
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