Fas/APO-1(CD95)はFas ligand(FasL)やFas抗体でアポトーシスを引き起こすことで知られる細胞膜受容体の一つである。以前、神経膠腫の壊死巣周囲細胞にFasが主に発現し、そのFasがアポトーシスを引き起こし、壊死巣を形成するのではないかと報告した。また、細胞死の経路構成し、抗癌剤やFas抗体、放射線で誘発されるアポトーシスにおいて誘導されるカスパーゼファミリーであるICE{interleukin-1β-converting enzyme(ICE)}やICH-1(ICE/CED-3 homologue-1)、CPP32は本研究においては極めて重要な因子である。本研究においては、神経膠腫13例に対してFasL、ICE、ICH-1およびCPP32の発現をRT-PCR、Western blot法、さらに免疫組織化学的手法を用いて、それらのmRNAと蛋白を観察した。RT-PCR法では神経膠腫全例にFasL、ICH-1、CPP32の発現がみられた。免疫染色ではFasLは神経膠芽腫全例の腫瘍細胞膜に過剰発現がみられた。このことは、もし神経膠腫がFasを発現すれば、アポトーシスが誘導できることを示唆する。ICE、ICH-1、およびCPP32の蛋白レベルの過剰発現は、神経膠腫の悪性化と共に認められた。さらに、ICH-1とCPP32の神経膠芽腫における過剰発現は、神経膠芽腫の病理学的特徴である壊死巣の形成に深く関与し、重要な機能を担うことが示唆された。
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