研究概要 |
Satellitosisはgliomaにしばしばみられる所見であり,腫瘍周辺部の神経細胞を取り囲むように存在する小型類円形細胞の集簇をいう.今回satellitosis cell(以下SC)に注目し検討した.当施設では,過去12年間に70例のglioma(Grade VI25例,Grade III31例,Grade II14例)を経験したが,このうちSCを認めた22例を対象とした.SCを認めた症例の内訳はGrade VIが3例(10%),Grade IIIが8例(25%),Grade IIは10例(70%)であり,Gradeのよい腫瘍で出現率が高い傾向にあった.免疫組織学的にはGFAP,p53,bcl-2,p16,p21,Ki-67,PCNAについて検討した.SCのGFAP陽性率は80%以上であった.SCのp53,Bcl-2陽性率はGradeのかかわらず10%以下であった.SCのp16は50例で陽性細胞(陽性率10-20%)を認めたが,腫瘍のgradeには相関はなかった.Ki-67及びPCNA labeling indexはSCでは低く,GradeIVでも1-4%であった.p53のmutation全腫瘍の30%にみられ,Gradeの高いものほど割合が高いが,SCのp53陽性率(免疫染色)との間には相関はみられなかった.Southern blottingではP16のhomozygous deletionは40%にみられ,Gradeの高いものほど割合が高くP16免疫染色での陽性率と逆相関した. 電顕では神経細胞とSCの間にはtight juntion様の細胞間接着装置ががみられた.SCの細胞体内にはミトコンドリアの増加,少量ではあるがintermediate filamentが観察された.他に特徴的な細胞内小器官は認めなかった.SCはglia系の細胞と考えられるが,その細胞自体の悪性度は低く,現在のところ腫瘍細胞とは断定できない.むしろ生体防御機構により発現し,神経細胞を保護する働きをしている可能性もあると考えられる.平成9年度はラット腫瘍モデルによりsatellitosisを形成し,さらに検討を進める予定である.
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