最近の臨床画像診断の飛躍的な進歩は医学界に革命をもたらしており、特に核磁気共鳴装置による画像診断(Magnetic Resonance Imaging:MRI)は画像の精密度及び画像面の易変換性等、臨床診断に多大な情報を提供している。脳腫瘍領域においても例外ではなく、造影剤による描出様式によってその質的診断や内部の微細構造などの解析等、いままでの画像診断法では得られなかった情報が提供されるようになり、治療方針にも大輻な修正がなされつつある。中でも、造影剤を用いた検討では病変の質的診断にまで及びつつある。例えば、肝臓癌診断用の超磁性造影剤(AMI-25)の開発に伴い、目的の細胞をより鮮明に描出し得、癌の画像上での質的診断への応用が期待されている。これら造影剤のなかでも、特に磁性微粒子はT2(横緩和時間)を短縮し、その存在部分は画像上低信号に描出される陰性造影剤として作用することで、今までとは全く異種の造影剤として近年注目されてきている。われわれは磁性酸化鉄超微粒子であるマグネタイト(Fe_3O_4)にモノクローナル抗体を結合させることで腫瘍への特異的集積性を持たせ、脳腫瘍の機能的MRI造影剤を開発し、その有用性につき検討して脳腫瘍の質的診断への道を開拓した。一方、この粒子は高周波磁場処理にてヒステレーシス損失により発熱することが確認され、これを腫瘍細胞内に取り込ませることにより細胞内温熱療法の可能性を示唆する結果を得た。すでにIn vitro、Ex vivoさらにIn vivo皮下移植モデルの実験にてその効果が確認されている。即ち、1)MRI造影剤としての有効性、2)細胞内温熱療法としてIn vitro、Ex vivo及びIn vivoにてその抗腫瘍効果が確認された。3)温熱療法にて腫瘍免疫が誘導され、腫瘍の拒絶反応が発現される、などの新たな研究成果が今回の実験で得られている。
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