今回、マグネタイトをポリエチレングリコールにて包埋した後にさらに指向性を持たせるために、抗gliomaモノクローナル抗体(G-22)を結合させ腫瘍特異的MRI造影剤の開発を試みた。ガドリニウムにモノクローナル抗体を結合させてMRI上で特異的画像診断を試みた報告も散見されるが、今回使用したモノクローナル抗体G-22は悪性グリオーマに対して特異性を有し、正常脳組織には認められないエピトープを認識する。既にこの抗体にアイソトープを結合させ、各種基礎的実験を重ね、その結果に基づき臨床面での特異的画像診断およびターゲット療法への応用の可能性につき解析してきている。今回の実験にてG-22結合マグネタイトは静脈投与にて脳腫瘍のMRI用特異的造影剤として有用であることが示唆された。一方、脳腫瘍に対する温熱療法に関しては、今回のリポソーム包埋マグネタイトは腫瘍組織内に十分な拡散性が得られるうえ、細胞内へ取り込まれるために細胞内加温という理想的な温熱療法が可能となり、温熱療法に新しい方法として位置づけられる。リポソーム包埋マグネタイトを脳内に発生した脳腫瘍に局所投与後、MRIT2強調画像を撮像し、腫瘍内拡散を確認することで、実際に臨床の場で使用されているMRI画像の造影剤としての評価が出来、その後高周波磁場処理により腫瘍内の組織学的な変化を経過観察すれば、腫瘍の動態についても詳細に検討できるものと考えられる。その結果、悪性脳腫瘍、特に難治性のgliomaに対する高周波磁場を用いた細胞内温熱療法の有効性が示唆されれば、その診断・治療面での貢献度は極めて大きく、既存の治療方法に温熱療法という分野が加わり、治療選択に厚みが増し、症例の治療成績に反映されて行くものと期待している。
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