閉塞性脳血管病変において新生血管による側副血行路形成は重要な意味を持っており、これを促進させることは治療上有効な戦略と考えられる。このような治療的血管新生を目的とした、血管新生因子の遺伝子導入法の有用性を検討するため、我々は線維芽細胞増殖因子(bFGF)遺伝子を発現させるアデノウイルスベクター(AxCAJSbFGF:以下AxFGFと略す)をCOS-TPC法を用いて構築し、in vitroにおいて培養ヒト臍帯静脈内皮細胞への遺伝子導入実験を行った。AxFGFを20pfu/cellで感染させると100%の細胞にbFGF遺伝子の導入・タンパク発現がみられた。発現したbFGFタンパクは主に内皮細胞の核に強く発現しており、また分泌シグナルを持たないにも関わらず培養上清中にも認められ、感染終了後20日目をピークとして8日目まで確認された。AxFGFを感染させた内皮細胞は増殖能が有意に亢進し、通常は増殖困難な低血清状態でも活発な増殖を示した。血管内皮細胞は再構成基底膜ゲル(Matrigel)上に播種すると分裂増殖が停止し、機能分化がおこり管腔形成をすることが知られているが、AxFGFにより6FGF遺伝子を導入された内皮細胞はコントロール群に比べて有意に管腔形成能が亢進した。血管内皮細胞の増殖及び機能分化としての管腔形成は血管新生の重要なプロセスであり、以上の結果はAxFGFによる血管内皮細胞への遺伝子導入が血管新生促進効果を持つことを示唆するものと考えられた(現在投稿中)。現在さらにラットを用いてin vivoでの血管新生促進効果を研究中である。
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