新生児ラット(Day1-3)の後根神経節を摘出し、Kimらの方法で培養してシュワン細胞の大量培養を行った。ラット顔面神経の頭蓋外に出た部位を露出し、脳動脈瘤クリップ(スギタ1番)でcrush injuryを与えた(2分間)。その後、シュワン細胞をコラーゲンゲル0.3mlに1.0x10^8/mlの濃度で調節し、それをポリマーカプセル(クラレ社)内部に塗布してcrush injury部を被覆した。対照群はコラーゲンゲル0.3mlのみをポリマーカプセル内部に塗布して被覆した。機能回復の程度は誘発筋電図にて神経伝導速度を25mmの神経距離で、crush前、crush直後、crush後14日目と経時的に測定した。 Crush injury前の神経伝導速度は47.6±6.8m/s(mean±SE)であったが、crush直後は11.8±2.7m/sに低下した。crush後14日目には、対照群は11.2±3.6m/sであったのに対して、シュワン細胞を移植した群では30.3±8.6m/sまで有意に回復した。 シュワン細胞の同種移植による神経機能回復は効果は認められるものの、免疫拒絶の問題、シュワン細胞のどの物質または機能によって神経再生が行われたかが明らかでない。以上の理由より今後、臨床で汎用性に用いる治療法としては問題が多いと考えられた。そこで、現在はapoptosis抑制遺伝子のBcl-2を髄腔内に導入することにより、神経細胞等の一時的にしても虚値および神経損傷に対する耐性を獲得させる研究の方向に移行している。Hvj-LacZおよびHvj-Bcl-2をラット大槽内に導入したところ、脳幹部を中心に広範囲に神経細胞に遺伝子発現されるようになることが確認され、これより生理学的検討を行う予定である。
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