研究概要 |
全身麻酔下にラットをウレタンフォーム上に固定し頭蓋骨を露出して金属プレートを頭蓋骨上に固定し、450gの重りをプレートをめがけて自然落下させて実験モデルを作成した。至適落下高度の検討を行い、文献上の報告による2mの高さよりの落下では大半の動物が死亡し、1mの高さよりの落下では、組織学的変化に乏しいことを確認した。ヘルメットの改良及び1.5mの高さより落下させることにより、脳幹部に瀰慢性脳損傷に特徴的なretraction ballなどの組織学的変化を得ることができた。深麻酔下での実験では、受傷直後の呼吸停止が遷延し約半数の動物が死亡した。いったん麻酔から覚醒させ、再度浅麻酔をかけた条件で外傷を加えることにより死亡率は20%前後に低下させることができた。retraction ballは脳幹腹側にもっとも強く認められ、48時間後に著明となっており、2週間後でも軸索の肥大化などの所見が残存していた。しかしながら、個々の動物には比較的ばらつきが認められた。同モデルでの損傷後の栄養因子受容体であるtrk A,trk b,trk cの発現をノーザンブロット法を用いて検索をおこなったが、固体差ならびに感度の問題で現在までのところ明らかな変動は確認されていない。実験モデルの個体差の克服、検出感度の向上など今後の検討課題である。中枢神経系への神経栄養因子の投与方法については、顔面神経損傷モデル、脳内血腫除去モデルを用いて検討した。顔面神経切断再吻合モデルでは顔面神経機能の回復促進効果が得られた。脳内血腫除去モデルでは、軸索、神経終末の損傷を受ける黒質ドーパミン細胞の維持に効果が得られることを認めた。
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