研究分担者 |
川村 康博 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (40295613)
片野 広之 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (30295612)
間瀬 光人 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (60238920)
松本 隆 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (50199676)
山田 和雄 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (90150341)
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研究概要 |
申請者らは平成8年度の研究立案で,頭蓋内圧亢進時の髄液循環動態を視察するために,水チャンネルや浸透圧調節トランスポーター遺伝子の発現を検討することを揚げ,次のような知見を得た. 1,水チャンネル遺伝子の発現:水チャンネル(MIWC)遺伝子は脳室上衣細胞ばかりでなく大脳白質にも広く発現が認められ,脳室壁を介した髄液の吸収以外にも水分子の移動に関係することが考えられた.しかし予想に反し,頭蓋内圧亢進・水頭症モデルや局所脳虚血モデルなど髄液循環の異常や脳浮腫を生じる病態では水チャンネル遺伝子の変動は認められなかった.水チャンネルには機能の異なるファミリーが存在すると言われており,MIWCのみの検討では病態をとらえきれない可能性があった.2,利尿ホルモンとの関係:c-type natriuretic peptide(CNP)は中枢神経系に広く存在しHormonalな髄液調節因子として注目されている.水頭症発現時のCNP遺伝子の発現を観察したが明らかな変動はみられなかった.発現量が微量であることや検討した時間的経過に問題がある可能性があった.3,グルタミン酸トランスポーター(GLAST)遺伝子の発現変化:GLASTはオスモライトあるいは興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の細胞内取り込みを行なう膜蛋白である.カオリン誘発水頭症ラットでは,カオリン注入後4日〜1週にかけて急激な頭蓋内圧亢進・脳室拡大をきたし,脳室周囲組織の破壊や神経伝達の異常をきたす.この時期に脳室周囲の反応性グリア細胞にGLAST遺伝子が著名に増加することを明らかにした(Masago et al.NeuroReport 1996).GLASTが髄液浸潤により傷害された局所脳組織において,浸透圧変化を還元する目的で,または損傷神経繊維から漏出したグルタミン酸を処理するために誘導された可能性がある.その他の浸透圧調節トランスポーター(タウリン,ミオイノシトールなど)に変動はなく,グルタミン酸と髄液循環障害との関連が示唆された.
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