視覚誘発脳波を利用した日本語会話システムの開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671607
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 中井 國雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (20180234)
• 研究分担者: 板倉 徹 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40100995)
• キーワード: 視覚誘発脳波 / 発語機能喪失患者 / M-系列 / 皮下埋没脳波電極

研究概要

筋萎縮性側索硬化症(ALS),脳幹の血管障害の症例は意識が清明であるにもかかわらず、発語機能とともに四肢運動機能も著しく障害され、意志の疎通が非常に困難な症例が存在する。それらの症例に対して言語機能を回復させ有意義な生活をおくらせることは社会的に大きな意味を持つ。我々はすでに眼前においてモニター上の指標を見つめることによりえられる誘発脳波から固視点を算出できる視覚誘発脳波処理装置を開発している。視覚誘発脳波から症例の固視する点を算出する装置の臨床実用に際しての問題点を解決することを目的とする。平成9年度も引き続き、よりよい動作環境のために以下の開発を試みた。
平成8年度に作成したM-sequence処理用ボード(モニターディスプレイ用ボード、EDI社で作成)を搭載したPower Macintosh用いて、患者の必要とする日本語文字、絵などをモニター上にはりつける作業を行うソフトウェアを開発し、正常人でテストを行った。その結果、あらたな音声合成装置は不要となるとともに以下の事が判明した。日本語環境では正常人においても、1区画に2^6個(8×8=64個)の文字或いは絵を張り付けることは文字或いは絵を探す作業に大変時間がとられることである。現在マトリックスを2^4個(4×4=16個)に減らしたものを作成し検討中である。
硬膜外電極、皮下埋没用送信機(Neuromed製)も引き続き改良中。経皮的に信号を伝達する方法の検討を行なう。現在のところ赤外線を利用した誘発脳波の経皮的送信法を計画中(部分的にNeuromed社に委託)。平行してリチウム電池を使用したシステムも検討中である。
本研究で皮下埋没脳波記録電極が完成されそれが快適に日本語環境で使用できることにより、発語機能を失った症例に対し安全で迅速な会話システムを提供できることになる。

研究成果

• [文献書誌] K.Nakai, T.Terada, E.Nakai, and T.Itakura: "Operations for medially projecting intracranial carotid aneurysm" 11th International Congress of Neurological Surgery. 1203-1207 (1997)
• [文献書誌] K.Nakai.T.Kasamatsu, T. Itakura, N.Komai: "Regeneration of norepinephrine-containing fibers in occipital cortex of adult cats" Brain Research Bulletin. 35. 409-412 (1994)
• [文献書誌] 中井國雄 Erich E.Sutter: "発語機能および四肢運動機能喪失患者のための会話システム" 1997年情報学シンポジウム. 1-5 (1997)
• [文献書誌] 中井國雄、林靖二、龍神幸明: "頭頸部領域のInterventional Radiologyに係わる問題" 医療. 48. 827-832 (1993)
• [文献書誌] Q.Wu, T.Itakura, M.Nakai, K.Nakai, N.Komai: "Suppression of seizure development after intracerebral autotransplantation of superior cervivcal ganglion in a rapid kindling model of rats" J.Neural Transplantation and Plasticity. 3. 324-325 (1993)
• [文献書誌] 前島伸一郎、中井國雄、板倉徹、土肥信之: "着衣失行-認知障害との関連も含めて-" 神経進歩. 38. 552-559 (1994)
• [文献書誌] 中井國雄: "視覚誘発脳波を利用した日本語会話システムの開発" ASL研究助成基金 助成報告. 1. 46-51 (1993)
• [文献書誌] 中井國雄、駒井則彦、板倉徹: "視床諸核における個体差の補正法の試み-パーソナルコンピューター-を用いて-" 機能的脳神経外科. 30. 36-43 (1992)
• [文献書誌] Y, Naka, K.Nakai, T.Itakura, N.Komai: "Immunohistochemical study on nerve regeneration following minor spinal cord injury" Advance in Neurotrauma Research. 2. 75-78 (1991)
• [文献書誌] T.Itakura,N.Komai K.Nakai, Y.Naka: "Vascular "sphincter" and microangioarchtectutre in the central nervous system : Constriction of intraparencymal blood vessels following treatment of vasoconstrictive neurotransmitter" Scanning Microscopy. 3. 337-341 (1990)