研究概要 |
本研究は,ブタ中枢神経系幹細胞の人工代用ドナーとしての有用性を追究するものであり,従って研究の焦点は1)中枢神経系幹細胞の遺伝子操作性,2)中枢神経系幹細胞の異種間移植の可能性,3)中枢神経系幹細胞の神経回路網形成能の評価にある。これらの点を解明すべく,平成8年度において以下の成果を得た。 1:中枢神経系幹細胞提供ブタ胎仔年齢の決定 In vitroにおいて分裂可能であり,さらに中枢神経系細胞のみに分化し得る中脳胞部神経板細胞を確保できる胎仔年齢につき検討した。妊娠14日,17日,18日,19日,33日の中型ヨ-クシャーより胎仔を帝王切開により無菌的に摘出し,その形態学的,組織学的,電子顕微鏡的検討により胎生17-18日が適正であると判明した。 2:ブタ中枢神経系幹細胞の移植実験 胎生17-18日ブタ胎仔中脳胞部神経板組織を摘出直後にパーキンソン病モデルラット線条体へ移植し,その挙動を組織学的,免疫組織化学的に,またはアンフェタミン誘発回転運動の推移により評価した。 (1)移植後免疫抑制剤(FK506;1mg/kg/day im,Endoxane;10mg/kg/day ip)の連日投与(移植後2週まで)により,移植4-8週の時点でほぼ全例にグラフトの生着を認めた。 (2)組織学的検討では,6週齢のグラフト内に未分化細胞からなるロゼット形成の所見を多数認め,さらにニューロフィラメント,チロシン水酸化酵素陽性細胞もみられた。 (3)ホストのアンフェタミン誘発回転運動は,移植後4週までは回復がみられず,機能回復については今後の課題と考える。 以上より,胎生17-18日ブタ胎仔中脳胞部神経板組織は異種間移植可能であり,遺伝子操作によるドーパミン産生能の向上を検討中である。
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